ポスターに使うフォントについて【ポスター印刷の基礎知識】
フォントとはそもそも何か
宮沢賢治作の童話、銀河鉄道の夜で、ジョバンニが活版印刷所で活字拾いのアルバイトをしていますが、いわゆるフォントはこの拾っている活字に相当します。まだパソコンがないころはこういった金属製のハンコのようなものを使って印刷をしていました。
この金属製のハンコのようなものに掘られた文字には、様々なデザインがありました。今でいうところのゴシック体や明朝体、草書体、楷書体などにあたります。このデザインのことを、本来は「書体」と呼びます。
書体が同じでも、金属製であるので、例えば「あ」という明朝体の金属ハンコの大きさは、それこそ大から小までたくさんあります。この「書体」と「サイズ」が揃った活字の一そろい(英語であればローマ字26文字、日本語であれば漢字含む数千字、あるいはこれに数字や記号を加えたもの)を「フォント」といいます。
現代では「書体」も「フォント」も同じ意味ような意味合いで使われます。金属製のハンコのようなものを使った時代から書体や印刷の世界に関わっている人もいるので、PCで扱うフォントを「デジタルフォント」という場合もあります。
フォントの種類
欧文フォント
セリフ体
文字の端々にセリフという飾りがついたフォントをセリフ体といいます。代表的なものに「Century」「Georgia」「Times」「Garamond」などがあります。
セリフ体を主にローマン体、と呼ぶことがありますが、これが日本語でいうところの明朝体です。このローマン体を斜めに傾けるとイタリック体になります。
サンセリフ体
セリフに「~のない」という意味のサンが頭について、「セリフのない書体」をサンセリフ体といいます。代表的なものに「Helvetica」「Arial」「Futura」「Optima」などがあります。
このサンセリフを、アメリカでは「ゴシック」、ドイツでは「グロテスク」と呼びます。日本語のゴシック体もここからきています。(欧文書体でいうところのゴシック体はブラックレターにあたります)
スクリプト
筆跡に基づく書体のことで、カリグラフィ的な装飾性の強い文字になります。筆記体、と呼ばれるものに相当します。代表的なものに「Zapfino Extra」「Bank Script」などがあります。
ブラックレター
ダイナミックなラインが特徴的なフォントで、このフォントを使うとページ内の黒い部分の割合が多くなるために「ブラックレター」と呼ばれます。
時代背景的な経緯で、蔑称として「ゴシック」(=洗練されていない、野蛮な)という呼ばれ方をした時期があります。
※ルネサンス期で人気だった「ローマン書体」以外は、当時、ローマ滅亡の一因であるゴート族に由来し、蔑称的に「ゴシック」と呼ばれ、洗練されていない野蛮な文字とされていました。人気だったローマン書体はセリフ体、嫌われたブラックレターを代表とするその他の書体はサンセリフ体という大まかな区分があります。
日本のゴシック体は、この時の「ゴシック」のデザイン部分だけを差して「ゴシック」といいます。黒くて一定の線で読みやすいので、こちらのフォントを愛用するデザイナーも多いです。
和文フォント
明朝体
文字の端々にウロコという飾りがついたフォントです。欧文でいうところのセリフ体にあたります。その他に装飾としてはらいやはねも存在します。
代表的なものに「MS明朝」「ヒラギノ明朝」「リュウミン」「平成明朝」などがあります。
ゴシック体
明朝体のように装飾はついていないフォントです。縦横の太さが均等であることが特徴で、このためディスプレイ上ではとても読みやすいフォントとして重宝されています。
代表的なものに「MSゴシック」「ヒラギノゴシック」「新ゴ」「平成ゴシック」などがあります。
和文フォントとしては、このほかに「小塚ゴシック」「小塚明朝」「游ゴシック」「游明朝」などが有名です。
特殊フォント
ディスプレイフォント、特殊書体、とも呼ばれます。主に見出しに使われるような装飾性の高いフォントで、装飾性が高いために長い文章やフォントサイズの小さい場面ではあまり利用されません。
代表的なものに「創英角ポップ」「金文体」「楷書体」「勘亭流」などがあります。
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演出したい雰囲気でフォントを選ぶ
デジタルフォントには、フォント・書体の種類、フォントサイズの他にフォントファミリーというものが設定されている場合が多くあります。
和文フォントだと「W0」から「W9」までで数字が大きくなるほど太くなるように設定されていますが、英文フォントだと英語表記である場合が多いです。UltraLightやExtraLight、MediumやRegularを経てbold、Heavyという表記などもありますが、基本的にはメーカーによって異なっています。
フォントは太くなればなるほど、大きくなればなるほど大胆さを増し、可読性が高くなります。
なので、サンセリフ体やゴシック体は見出しとしてインパクトを与えるときによく使われます。
フォントは細くなればなるほど、小さくなればなるほど委縮し、可読性が低くなります。
なので、セリフ体や明朝体は、静けさや美しさ、高級感を与えるときによく使われます。
以下のマトリックスを参考にしてください。
以上をもとに、以下のようなことが言えます。
- 高級感を出したいときにはセリフ体・明朝体を使う
- とにかく目立たせたいときはサンセリフ体・ゴシック体を使う
- 目立たせて高級感を出したいときは明朝体の太文字を使うか、ゴシック体のそこそこ細いフォントを使う
- 文章が長いときには、可読性を優先して特殊フォントは使わない
- 可読性のないテキストが多くある画面は、安っぽく見える
和文フォントについて
欧文フォントはフリーでたくさんあちこちで手に入れることができますが、和文フォントはあまり数がありません。それはなぜかというと、欧文フォントは1書体につき基本ローマ字26文字+いくつかの記号、英数字ですみますが、和文フォントはひらがな48文字、カタカナ48文字、さらに常用漢字おおよそ2000文字以上に、特殊文字が追加されます。和文フォントは欧文フォントのおおよそ90倍以上の労力をもって作られている、といっても過言ではありません。
デザイナーで広く使われているHelveticaフォントを、フルパックで購入した場合、おおよそのお値段が5万円なので、この90倍となると450万円の値段にならなければならないのが和文フォントなのです。
最近はライセンスで年間契約、というものが主流です。モリサワフォント様は1年で5万円、PC1台から。
エヴァンゲリヲンシリーズで有名なマティスフォントを提供しているフォントワークス様、本当に美しい使いやすいデザインのフォントを出されています。1書体1パッケージでだいたい税別18,000円。ライセンス提供や新作提供はLETSという別サイトで行われています。
フリーフォントの投稿サイト
和文フォントでもフリーで使えるフォントはあります。
無料で使える!日本語フリーフォント投稿サイト|FONT FREE
いずれも制作者さまが提供しているものなので、利用規約などはしっかりと目を通しましょう。
フォント選びに疲れたら、専門業者に任せましょう
Hotdoggerではデザイン作成サービスも行っていますので、ポスター印刷のテーマや目的に合ったフォント選びのご相談も受け付けています。
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