バックボードを知っていますか?【寄稿コラム】
私の場合、それは野球観戦後のヒーローインタビューのときに感じたんですけどね。
一体この違和感は何なんだろう、と、常日頃思っていたんですが、いつの頃からか、後ろに企業広告の入ったボードが立っているのに気づいたわけです。
「そういえばアレって何なんだろう」全てはココから始まったわけです。
●いきなり正解を言えば、バックボードと言うんです。
まぁもちろん、このように高度に情報化された社会ですから、わからなければ調べればすぐに答えは出ます。
正解は「バックボード」
うん、正直はじめの感想としては、なんともひねりのない名前だな、と思ったわけですが、わかりやすいといえばわかりやすいネーミングですね。
まさにアレは、後ろにある板なんですから、バックボードと言うにふさわしいものです。
で、このときは、ああ、あれはバックボードと言うんだなぁ。という単純な感想で終わったわけですが、それからが問題でした。
やたらと、気になってきたのですよ、バックボードが。
●気がつけばバックボードだらけの社会
気になってきたと言っても、バックボードのことを考えるとドキドキして夜も眠れない。というわけではなくて。
いやまぁ、そんなことあるはずはないんですが。
とにかく、社会のあらゆる場面にバックボードが存在しているので、そのたびに「あ、バックボードだ」と目について仕方なくなったんですよね。
とにかくもう、巷にはバックボードが溢れているんですよ。
なかでもよく見るのが記者会見。
それこそ結婚記者会見や謝罪会見のようなものでない、普通の記者会見の場合。
特に、企業のCM絡みの記者会見や、タイアップのある番組の記者会見なんかだとほぼ間違いなく後ろにはバックボードが立っていますよね。
むしろ、バックボードの立っていない記者会見を探してしまうくらい、今や当たり前のアイテムになっています。
そして次に目につくのが野球やサッカーなどのインタビュー。
もうこれも、当たり前のようにバックボードが使われています。
チームロゴやオーナー会社の製品だとか商品の名前、中継しているテレビ局やネット放送の社名やタイトルロゴ。
特に国際試合なんかになれば、協賛会社の名前が所狭しと並んでいるバックボードが使われていて、なんとも賑やかな雰囲気になっています。
そう、もうそれは当たり前の光景なんですよね、記者会見やインタビューの。
●しかもそれはテレビの世界だけではなく
とはいえ、バックボードに縁があるのは、それこそ企業チームをもってプロスポーツに参入してしまうような企業や、テレビを呼んで記者会見できる企業に限られているんだろうな。
そんなふうに思っていたんですが、どうやらそれは大間違いだったようで。
ちなみに私が勤めているのは、言っても誰も名前を知らないようなよくある中小の小売業者なのですが、つい先日これまた中小のメーカーさんに行ったのですけどね。
入口はいってすぐ、目の前にバックボードですよ。
いや、といっても出入り口を塞いでいたのではなく、入り口に座っている受付の女子社員の背景がバックボードだったんですよ。
これはちょっと驚きとともに、感動でしたね。
というのも、これまでバックボードに少なからずの興味をいだいていた私にとって、それは生のバックボードとの初対面だったのですから。
と言うと大げさですが、それでも「おおバックボードだ」くらいの驚きはありました。
しかも、言い方は失礼ですが取り立てて有名でもないこの中小企業にバックボードです。
で、その時隣に立っていた上司に「テレビの記者会見でもないのにバックボードってあるんですね」と感想を漏らしたんですが、それを聞いた上司の顔がとたんに訝しげに変わったわけです。
なんだろうと思って、見つめ返すと不思議そうな声で「いや、ウチにもあるだろバックボード」ですって。
●バックボードの効用
で、その日の外回りから帰ってすぐ、私は自分の会社のバックボードを確認したのです。
ええ、有りました間違いなく、それはパーテーションで区切って無理やり作った社長室の、自社製品の展示スペースの背景として存在していました。
真面目でミスが少なく、反面、これといって威張れるような手柄もたてない私には縁遠い社長室。
そりゃ気づかないのも無理はないよなぁ、なんて思ったのですが、そうは言っても、今やバックボードハンターな私としては、言われるまでバックボードの存在を知らなかったのは悔しかったですね。
そして同時に、初めて見た自社のロゴのはいったバックボードに、今度は真面目に感動しました。
その感動で、私は、バックボードの本当の効用に気づいたわけです。
いや、もちろん、バックボードの存在意義は会社の名前を周知したり広めたりするっていう宣伝効果なのはわかっているんですけどね、それとは違う大きな意義というやつです、
そう、これ、なんだか自分の会社が、中小企業で知名度もないうちの会社が、すごく立派に見えるんですよね。
というのも、一般的なバックボードのイメージって、やっぱり一流の大企業がビックイベントで使うものって印象があるからなんだと思うんですね。
だってですよ、ワールドカップやWBCで使われているのと同じものが我が社にあるんです。
しかも、そこには、世界企業やヘタをすると世界的な組織委員会のロゴがはいっているのと同じような感じで、見慣れたうちの会社のロゴが並んでいるんですよ。
なんだかちょっと誇らしいんですよね、気分が。
そういえば、通い慣れたあのメーカーさんの受付の後ろにバックボードを発見したときも「おおなんかすごいことをやってそうな会社だな」と良く知っているのに思えましたからね。
いやはや、バックボード、恐るべしです。
●ごちゃごちゃして見にくい疑惑
で、そんなちょっと誇らしい気持ちで満足気にバックボードを眺めていたんですが、ちょうどその時後ろを通りかかったウチの女子社員がバックボードを眺めている私に言うのです。
「アレ、逆に商品見にくくないですかね?」と。
たしかに、そう言われてみれば何となくその女子社員の言いたいことは分かるんですよね。
よくあるあの四角いマス目が並んでいるバックボード、市松模様というらしいんですが、あのバックボードが後ろにあるとその前のものが逆に見にくくなるというのはあるかもしれないです。
ちょっと気になったので、バックボードを我が社に導入した同期のKにその辺のところを聞いたわけです。
するとKが言うには「むしろ、ちょっとごちゃついているくらいのほうがそこに目が行くだろ」なんだそうです。
つまり、白背景や後ろがただの壁やパーテーションだと、たしかに商品そのものが際立って目立つかもしれないけれど、普通すぎてそこ自体を誰も見ないんだというのです。
しかも続けて「色味を自由に使えるから商品イメージも伝わりやすいしな」と。
いや、同期ながら頭のいいやつだなとKに感心しながらも、確かに言われてみればそのとおりだと思ったわけです。
例えば夏物衣料の背景がウッディーな壁よりも、青い市松模様のほうが断然涼しそうだし、土鍋の背景が真っ白い壁よりも、暖色の市松模様のほうがそそられます。
うーん、奥が深いな、バックボード。
●気付きの大切さをバックボードに学ぶ
とまぁ、お立ち台の背景に存在しているのに気づいてから、私のバックボードを巡る冒険は続いているのですが、何もこれバックボードに限ったことではないですよね。
日々の生活の中で、ふと、今までなんとも思っていなかった何かに気がつくこと。
そしてそれに心奪われて、行く先々でそれに出会い、そして調べていくことで新たなものを学べるということ。
気付きから始まる学びのプロセス。
それというのは、本当に人間にとって楽しく、そして成長を促す行動なんだと思うのですよ。
と、ここまで考えて、また気づくわけです。
気づきを与えて興味を持たせるための引っかかり。
ああ、まさにこれってバックボードの効果そのものなんだなぁと、うまくまとめた気になって筆を置こうと思います。
バックボードの真相を巡る私の冒険が、さらに続くことを祈って。